支援者へのインタビュー① きよさん
きよさん 30代 男性
スーパーで万引き、社会になじめない、2週間で逃走、対人不安症、刑務所に入った負い目
つらいことも含めて生い立ちから支援している現在までを話してもらいました。
20代のほとんどを刑務所で…
高橋:改めまして、今日はよろしくお願いします。
キヨさん:あ、よろしくお願いします。
高橋:えー、まず、インタビューの時に使う仮名を決めてもらうのですが、なんてお呼びしましょうか?
キヨさん:あ、えーと、キヨでお願いします。
高橋:では、キヨさんってことで、今回よろしくお願いします。
キヨさん:よろしくお願いします。
高橋:まず、キヨさんの生い立ちを教えてもらえますか。出身地や仕事に関してとかもお願いします。
キヨさん:はい、わかりました。まず、出身は札幌市です。3歳の頃に江別に引越し、成人迎えるまで江別で生活していました。高校卒業してからは札幌の建設業で働いて、そこからまぁいろいろ細かいバイトをしながら、21歳くらいの時に派遣で愛知の方に行きました。そこから派遣切りかなんかにあって東京に行って・・・。って感じですかね。
高橋:はい、じゃあ、ご家族に関してもお聞きしたいのですが、どういった家庭環境などかを教えていただけますか。
キヨさん:はい、4人家族です。父・母・妹と自分です。家族の雰囲気はまぁ普通って言ったらいいんですか、一般家庭と同じように仲良いですし。中学、高校まで家族全員でディズニーランド行ったり、小学校から高校生まで毎年のようにキャンプ行ったりして、ホント、仲の良い家族でした。まぁたまに、ケンカとかありましたけど、まぁ、極普通の一般家庭だったと思っています。
高橋:なるほど。じゃぁ、そこから服役した経験があるという風に伺ったんですが、それはどういった理由、きっかけだったんでしょうか?
キヨさん:うん、まぁ、きっかけって言うのが、そのまず・・・自分が犯罪を起こすようになったのは、愛知で派遣切りにあって、それで東京に出て行ったんです。その頃、稼いだお金で生活してたのですが、次第にお金も(底を)ついてしまって、食べる物にも困るようになって・・・。それで、スーパーで万引きをするようになって、そこで初めて警察に逮捕されたんです。それから、やっぱりそういう(万引きを繰返す)生活からなかなか抜け出せなくなり、犯罪もずっと繰返すようになり、刑務所にも何回も入るような感じになってったんです。
高橋:なるほど、じゃぁ、生きていくため、生活するために、やむにやまれず、何度か万引きというか、窃盗を繰り返してしまったのですね。
キヨさん:そうですね。
高橋:わかりました。何度か服役をされたってことですけど、出所している期間で辛かったことってどんなことがありますか?
キヨさん:やっぱり一番、今、う~ん、一番きつかったのは、やっぱり出所して「スグ」だと思うんですよね。やっぱりこの何年も刑務所に入ってたことで、ポンって出されてもなかなか社会に順応できなかったりとか、なかなか精神的に追いつけない部分もありました。
そこで誰か相談相手がいる、いないで変わってくると思うんですけど、自分の場合はいなかったです。だから、自分も前回、協力雇用主の元で、介護の仕事で就職してたんですが・・・。やっぱりなかなか追いつけない部分があっても、誰にも相談する相手もいない状態でした。
でも会社にせっかく雇ってもらったから何とかしないといけない、って感じだったんですが、やっぱり自分の中でもうダメだなって、思って・・・。
だから、一番つらいのは出所後ですよね。1年・・・。
高橋:相談できる人がいるかいないかでそのあとの生活が変わってくるんでしょうね。
キヨさん:ですね。やっぱ、変わってきますね。それとあと、住む場所が一番ですねぇ。多分それが有る無しで、ここも変わってきますねぇ。やっぱり。
高橋:住む場所が無い時期ってあったんですか?
キヨさん:ありましたねぇ。で、その協力雇用主の元で働いてたんですが、
わずか2週間で精神的に辛くなって、自分、耐えられなくなって、逃げてしまったんですねぇ。やっぱ逃げるってことは、もちろん、住んでたアパートに住めなくなるんです。で、また以前と同じようにネットカフェで生活しながら、わずかなお金でスーパーに行って買って食べたりしてたんだけど、(手持ち金も)わずかだったので、すぐなくなって、同じようにまた万引きしながら生活してたって感じですかね。
高橋:なるほど。ではそのあと、刑務所を出所してから、今こうして支援を受けている形ですが、その支援を受けるきっかけになった事、入口はどういう状況でしたか?
キヨさん:狸小路のある(店舗名)で万引きしたんですよね。で、その時も警察に捕まって、それで中央警察署に行ったんです。その時は出所してまだ間もなかったですし、自分の中で、あー、また刑務所なんだなぁー、またやってしまったぁ。と思ったんですけど・・・。
その時に驚いたことがあって、警察の人から、「二つ選択があるんだけど、キヨ君は生活保護を受けるか、それとも就労支援を受けて就職するかどっちがいい?」って言われたんです。で、その時に、うん?あれ、俺、逮捕されないのかな?って。
結局、まぁ「自分は一応、まだ出所して間もないんで。生活保護でゆっくり精神的に落ち着いてから仕事したいって考えてるんですよね。」って言ったら、じゃぁ、その時に「わかった、ひとつそういう支援場所ある、そこを紹介してあげるから、そこで頑張れ!」って言われたんですよねぇ。
で、その時に、あ、またなんかチャンスもらえたって。変な言い方ですけど、なんか本当に救われた。って感じでした。これでもう一回、俺、刑務所行ったらますますダメになるってわかってたので、そういう場所を紹介してもらえたのがすごく嬉しくて。
で、その時にギルドケアの人が来てくれて、いろいろ話しをしてくれて、面倒見るから、って。その中の言葉で嬉しかったのが、「キヨ君のペースでやってイイから。ゆっくり落ち着いて生活してくれればイイから。で、何かあったら俺たちが相談にのるし、支援もするから。」って言ってくれた言葉が、すごく嬉しくって。
やっぱりこうやって支えてくれる人がいるんだなぁ、と。でも支えてくれるけど、また裏切るようなことしちゃいけないって思うし、やっぱり自分も含めてですけど、自分に関わる人間にさんざん迷惑かけてきたんで、ここで踏ん張らないと、また同じ繰返しになるって思ったので、やっぱりギルドケアさんの元で、支援してもらったってことは、自分としてはホント救いになりました。助かった。ホント、感謝しかないですねぇ。
高橋:あー、じゃぁ最初に警察の方が、逮捕じゃない、新しい道、支援への道を選ばせてくれたことから、支援に結びついているってことですね。
キヨ:はい、そうですね。
高橋:では、次に障害について、お聞きをしたいと思うんですけれども。精神科などで診断された障害に関してお話しいただけますか?
キヨさん:はい。わかりました。えーと、まぁ前にも話したんですが、要するに出所して間もない頃は、精神的に安定していないって自分でも感じてましたし、その中で心療内科を診てもらったんです。で、診断受けたのが、「対人不安症」だったんです。やっぱそうだったんだなぁって。その時の自分は外に出ても、スゴイ人の目を気にしちゃって。しかも顔もやっぱりどっか変にこわばったりしてたんです。これちょっとなんかあるなぁと思ったんで、その診断受けた時には、あ、やっぱりな。と思った。
高橋:あー、気持ち的に多くの人の前だと、ちょっとこわばったりすることあったんですね。
キヨさん:はい。やっぱそうですね。でも自分の事件が新聞に載ったりニュースになったりしたことはないんですけど、やっぱり4回も刑務所に入ったって負い目がスゴイありましたし、やっぱり恥ずかしい気持ちもありました。刑務所に入っていたということもあって、やはりもう自分は一般人とは違うんだぁ、という風にスゴイそこで追い込まれてました。
それで、他人からどういう風に思われてるんだろうなって考えが強くなって、だから、街の中を歩いてても、僕の事どう思ってんだろうなぁ、何思われてんだろうなぁ。という風に思うようになって。
高橋:あー、つい人目を気にしてしまうみたいなことがあったということですね。
キヨさん:そうですね、ホントやっぱり以前の自分だったらそんなことはあまり考えてなかったのに・・・。そういう風に考えるようになったってことは、やはりどっかで何かストレスとかが溜まって、それが蓄積されて、人の目を気にするようになったのかなぁって思った。だからその時にも心療内科受けて、そういう診断受けててよかったとその時には感じているんです。別に(受診したことが)悪いと思ってないですし。そういう診断を受けたんだったら、ゆっくり時間をかけて治していこうという考えになれた。
高橋:服役を終えて、罪を償った後でも、やましさみたいなのがやっぱり拭いきれなかったっていうところから、精神的にも追い込まれていったってこともあったんですかね。
キヨさん:そうですね。やっぱり家族のこともそうですけど、自分が犯してしまった罪を感じてて、それに追い込まれてて、これからどうやって、罪を償えば良いのだろうと。
自分はいつ一般の人と対等に生活できるんだろう。っていう風に考えて、それが逆にストレスが溜まって、自分のことがスゴイ嫌になって。
それで人と接するのがちょっと億劫になったりとか、嫌になってきたりとか、まぁ、ありました。
高橋:なるほど。今こうやって支援に結びついたことで、そういった不安は少し解消されましたか?
キヨさん:あ、もう最初のころよりはだいぶん不安はなくなりましたし、外に出ても人目を気にすることもホントなくなった。
(今は)ちょっとした除雪や掃除をさせてもらっている。その中で同じアパートの住人だけじゃなく、他の場所でも、働いている人達とコミュニケーションをとれるんで。自分の中で一番大切なことは何だろうなって思った時に、人とコミュニケーションを取る事だと思った。
やっぱり、刑務所に入ってから、一般の人とコミュニケーションすることがなかった。それで変に考えてしまうことがあったんですが、やっぱり他の人たちと話すようになって、精神的にもだんだん落ち着いてきたので、これからも持続していきたいなぁっていう風には思ってますね。
高橋:これから将来に向けて、目標というか、こういうことをやってみたいとか、そういったのはどういう風に考えているんですか。
キヨさん:元々、自分がこういう生活になってから、考えているのが、自分がもし、自立するにあたって、就職するのにあたって、何が一番いいだろうなって思ったんです。自分は元々人と関わるのが好きだったという人間だったんですよ。だから、そういうこともあって、自分の過去の人生をどこかに活かすことができないかと考えた時に、人に対してなんか芯にできる仕事って考えたんですよ。
それで刑務所にいた時にもそうだったんですが、自分が最初考えてたのが、介護の仕事だったんですよね。だから協力雇用主の元で就職させてもらったんですけど。
やっぱりそういう気持ちってのは片隅にはありますし、何か人に支援できればいいなって思っているんで、行く行くはそういう仕事をしたいと思っています。
高橋:まぁ、自分も支援をうけた分、誰かの支えになりたいっていう気持ちがあるっていうことですね。
キヨさん:ありますね、やっぱり自分だけ(の経験)にはしたくないっていうか。自分だけじゃなくて、逆に自分が変わったから他の人にも(その経験を)やってもらいたいっていうか。自分って多くの事を経験できた、って思っているので、いい言い方をすれば。
他の人には経験できないことを経験できているんで、逆に人の痛みをわかってる、と感じているんで。だったら、そういう事を含めて人に対して支援していきたい。何かに対して協力したいなっていうのがあります。
高橋:じゃあ、今現在、過去の自分と同じように困っている人たち、支援を必要としている人達にむけて、言いたい事って一言何かありますか。
キヨさん:一言だけ言えば・・・。
今は辛いと思うんだけど、絶対どっかでその運命の巡り合わせっていうのが、出てくると思います。自分もやっぱり何年も時間かかりましたけど、多分それまで運命の巡り合わせって、なかなか出会えるのは難しいと思うけど、絶対どっかで運命って出てくるって思う。だから、それまで頑張って生活してほしいなって思いますね。絶対に人っていうのは、どこかで見ているんだよってことを言いたいです。
高橋:はい、ありがとうございます。では、最後に今回この支援を受けて、率直な感想というか、良かったところをお聞きしたいんですけど大丈夫かな。
キヨさん:あ、大丈夫ですよ。まぁ、今ギルドケアで支援してもらってるんですけど、ギルドケアさんの良いところって、自分たちの事をすごく考えてくれてて、いつも言われてることなんですけど、「キヨ君はキヨ君のペースでゆっくり生活してくれていいから」って言ってくれる。で、「何かあったら俺たちに相談しな」ってふうに言ってくれている。
過去、他のところで生活支援をうけたことはあったんですが、そういう言葉ってなかなかなかった。早く仕事して早く自立しろっていうのがあった。
その中でもギルドケアさんはホント違ったんで。ホント、今自分のペースで出来ていますし、
以前の自分だったら、ちょっとでも嫌な事があったら、逃げていたんですけど、今はそういうことが全然ないです。今もうちょっとで半年近くなりますが、自分のペースでゆっくり生活できているので、ギルドケアさんには感謝してもしきれない。ホント「感謝」の一言だけです。
高橋:あーありがとうございます。
なんかすみません、いろいろと話し辛い事も話していただいてありがとうございます。
キヨ:いえいえ、あ、ありがとうございます。
高橋:また、今後のキヨさんの未来に期待をしています。
キヨさん:あ、ありがとうございます。
高橋:じゃあ、どうもありがとうございました。これからも頑張りましょう。ありがとうございます。お邪魔しました。
キヨさん:ありがとうございました。
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